家づくりを考え始めた人は、まず「冬あたたかい家」がいいな~と思うのではないでしょうか。
特にこれからの季節、信州の厳しい寒さを思うと。でもー。そう、意外と忘れがちなのが夏の暑さ対策。
建てる前はこだわるつもりだった断熱・気密性能。でも実際に建てた家は・・・。
建てた後に、「暑さ」「結露」「湿気」などで悩んでいる方も多いのでは。
一年を通して快適に過ごすためにも、家の性能「断熱性」「気密性」について、もう一度考えてみましょう。

右:(株)ヴァルト 小野 治社長
中:パヴァテックス・ジャパン(株)トーマス・ケースリン社長
左:テクニカルアドバイザー 国府田 大輔さん

家の性能にこだわるということは省エネ・環境にもこだわること

「スイスではオイルショック以降、エネルギーや環境に関する意識が高まっています。日本では冬寒くて夏暑いという環境を受け入れる文化があるようですが、スイスでは家の居心地の良さに対する意識は非常に高く、寒いのも暑いのも我慢しません。」

そう語ってくれたのは、パヴァテックス・ジャパン(株)のトーマス・ケースリン社長。

家を建てるときには、どうしてもデザインや間取りに目がいってしまいがちですが、人生の多くの時間を過ごす場所ですから、やはり日々の暮らしが快適かどうかということは、かなり重要なポイントです。トーマスさんのお話では、建物にも人にも優しくて快適な家づくりは、そのまま省エネ・環境にもこだわった家づくりに繋がるのだとか。これからの家づくりには欠かせない重要なポイントが、ここにあるようです。

エネルギー消費量も考えた高性能な家づくり

ドイツには建築物理学という学問があり、断熱や防水、防湿の構成などを示す材料施工的な分野にまで踏み込んだ研究が行われています。スイスでも、この建築物理学という考えに基づいた家づくりがなされていて、建築士は、エネルギーの専門家と一緒に家づくりを考えます。これは、建築確認の項目の中に構造的な評価だけでなく、断熱や気密といった温熱関係の検査があり、その基準が非常に高いからです。日本の基準で合格した家でも、スイスでは建築許可が下りないといいますから、性能基準のレベルの高さがわかります。今では一世代しか暮らさないことが多い日本では、性能が少し落ちても、できるだけ安く建てたいと思うのは仕方のないことかもしれません。しかし、何世代にも渡って住み続けるのが大前提のスイスでは、お金をかけても、快適で結露やカビの問題が発生しない家を建てようと考えます。快適な室温を維持するために必要な暖房や冷房のエネルギー量が少なくてすむ高性能な家は、冷暖房費を気にすることなく一年中快適に暮らせるというわけです。

高性能な家といえば、「高気密・高断熱」という言葉がすぐに連想されますが、断熱材そのものの良し悪しや施工の仕方により、家の性能は大きく違ってきます。断熱材には様々な種類がありますが、ここでは環境にも人にもやさしい、自然素材の特質をいかした木質繊維断熱材について考えてみましょう。

冬も夏も快適な室内空間自然素材の木質繊維断熱材

木質繊維断熱材は、木材に本来備わっている断熱性能を独自の製造方法によってさらに向上させ製品化したものです。スイスの大手メーカー「パヴァテックス」の木質繊維断熱材は、低い熱伝導率に加え、木材に備わる高い蓄熱性、透湿性と吸放湿性によって、室内を一年中心地よい、快適で健康的な環境に保ってくれる優れものです。

具体的には、どんな働きをしてくれるのでしょう。

寒い冬に大きな力を発揮するのはもちろん、高い蓄熱性が、暑い夏でも室内を涼しく保ってくれます。さらに、湿気が拡散しやすいので、湿度の高い日本において、建物内の結露を防ぎ、カビの発生を押さえます。つまり、湿気は通してくれるけれど風は通さないので、内側にある構造体を痛めず、建物も長持ちするというわけです。

その他にも、吸音性や防火性に優れているので、気になる生活騒音を遮断したり、万が一の火災の時も延焼を防いでくれたりします。ですから、屋根、外壁、内壁、床など、それぞれに最適な製品を施工することによって、家のあらゆる部分でその実力を発揮することができることでしょう。

また、有害物質を含まない純粋な有機素材で製造されているので、室内の空気を汚さず、健康的で気持ちの良い毎日を過ごすことができます。

地球環境を守るという点においても、原材料に、モミやマツといった針葉樹を使用していますが、他の断熱製品と比べて少ないエネルギー量で製造できるので、CO2の排出量も抑えることができます。

人にも環境にもやさしい家づくり

このように、高性能な家を建てると、必要最低限の冷暖房で、冬暖かく夏涼しい快適な住環境を得られるということがわかってきました。エネルギー消費量を少なくできるということは、CO2排出量も抑えられます。エネルギー効率だけでなく、快適で健康的な居住空間と効率的な資源保護を同時に実現できる高性能な家づくりは、まさに人にも環境にもやさしい未来を考えた家づくりだと言えるでしょう。

木質繊維断熱材と地中熱ヒートポンプで北欧レベルのエネルギー燃費を実現

パヴァテックスの木質繊維断熱材を、いち早く取り入れ、高性能な家、より質の高い住宅環境の家づくりを目指している長野市の(株)ヴァルト。1年間で使用する1m2あたりの総電力消費量が60kwh/m2以下と、国内ではハイレベルの燃費の良さを誇るヴァルトの家ですが、これからの自然エネルギー「地中熱」を利用した冷暖房システムで、世界最高水準のドイツ・北欧レベル、45kwh/m2以下というエネルギー燃費を実現しようとしています。

「これは、暖冷房を控えて省エネを目指すものではなく、快適で健康的な室内環境を保ったまま、家の消費電力量を太陽光発電の創エネでネットゼロ(差引ゼロ)にするものです。」と語るのは、ヴァルトの小野 治社長。すでにオープンハウスには地中熱交換機用の採熱管が埋設され「地中熱ヒートポンプ」の冷暖房システムと「太陽光集熱パネル」が稼働し、暖冷房・給湯が自然エネルギーを有効に活用しているとのこと。

地中熱ヒートポンプシステムとは、地中およそ10mから100mの安定した熱エネルギーを暖冷房エネルギーに交換して利用する新しい暖冷房システムです。地中温度は年間を通じてほぼ一定で、長野の場合は15℃位。夏は外気温より低く、冬は外気温より高いため、この熱を夏は冷房に、冬は暖房に利用します。欧米では広く利用されていますが、日本では一般住宅にはまだほとんど利用されていません。

地中熱は外部要因による温度変動がないので、年間を通じて安定した熱供給が得られるほか、省エネ効果があるうえ、冷房の排熱を外気ではなく、地中に放出するので、ヒートアイランド現象を抑制できるなど、メリットが多い自然エネルギーですから、今後の普及が大いに期待されるシステムだと言えるでしょう。

取材協力
パヴァテックス・ジャパン 株式会社
株式会社 ヴァルト

独自の外断熱FB工法床下の暖房機1台で家中あったか

ホクシンハウスの家でまず驚くのは、冬、玄関を開けたとたんに感じる暖かさ。「玄関から居間、台所、洗面所、お風呂場と移動しても、その暖かさが変わらないのは、家全体が丸ごと暖かい空気で保温されているから。もちろん床も温かいですから、冬でもスリッパはいりません。」 そう説明いただいたのは、ホクシンハウス長野店の奥秋 誉人店長。

そんな夢のような家を支えている技術が、外断熱と内断熱を併用したFB工法。最高ランク1cm2/m2(1m2あたり1cm2の隙間面積)以下として全国初認定を受けた超高気密性能のおかげで、一度暖まった空気が逃げません。通常のエアコンなどの暖房とは違い、吹き出しの風を感じることもなく、完全な輻射熱暖房です。

FB工法は、床下の基礎の部分まで断熱材で覆っていますので、部屋の空気環境と同じように暖かな空気が逃げない仕組みになっています。床下に送られた新鮮な空気はそこで暖められ、壁体内通気層の中を自然循環するので、各部屋同士はドアで仕切られていても、家中が自然に暖まっていきます。また、部屋の周りが暖まったあと、その輻射熱により身体が暖まるので、その快適性は最高です。

気密性が高いと換気が気になりますが、24時間換気システムにより、常に新鮮な空気が循環しています。外の新鮮な空気は、全熱交換されますので、冬でも冷たい空気が直接床下に送られることはありません。

お風呂にカビが生えないって本当?

床下に置く暖房器具はとてもシンプルです。36坪までの2階建住宅でしたら1台のエアコンで十分暖まります。また熱源も電気、ガス、灯油でもお好みで選べます。基礎部分は45cm以上の高さがあり、コンクリートのベタ基礎仕上げになっていて、階段下の入口から床下に入ることができますので、メンテナンスもとても楽です。また、この入口の空きスペースを利用した物干し場は、冬でしたら一日中暖かいので、洗濯物が一晩ですっかり乾いてしまうほどです。主婦にはうれしい乾燥室ですね。

また、暖かい空気ですっぽりと包まれている状態なので、室内は乾燥しがちですが、実は、洗濯物やお風呂、料理などによって発生する水蒸気によって、適度な湿度を保っているのです。ですから、お風呂場も乾きやすく、カビが発生することはほとんどありません。

様々なタイプの超高性能エコ住宅

ホクシンハウスには、国が推奨する次世代省エネ基準対応の「FB工法」を始め、壁の断熱性能が2倍の「FBスーパー工法」、壁の厚さを40cmにすることで、生活熱と太陽熱だけで必要な暖房エネルギーをまかなえる「FBソーラー無暖房住宅」といった様々なタイプの住宅の他、サイズと外周デザインの規格化で、価格と光熱費の目安を明示し、設計段階で比較検討できるようにした「グリーンシードハウス」や太陽光発電で年間の冷暖房費と給湯費がまかなえる「エコレッツ」という省エネ性能を追求したエコ住宅があります。

省エネ性能に優れたこれらの商品は、高性能な設備機器と太陽光発電を取り入れることで、家庭の年間の消費エネルギーが正味ゼロになる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」として採択されるなど、ホクシンハウスの暖かな家づくりに対する並々ならぬ情熱が伝わってきます。

環境先進国のドイツでは、アパート等でも冷暖房費の燃費が明示されて、誰もが住宅の燃費性能に高い関心を持っているそうですが、日本でも住宅の燃費性能が住宅購入の大きな判断基準となる日が、もうすぐそこまできています。

取材協力/ホクシンハウス