木の素性にこだわった「長野県産材」
信州は約80%を森林に囲まれているという、まさに森林国。
信州の木を使った家づくりとは。
信州の県産材は樹種が豊富。南北に長く標高差も大きい山岳県という地理的条件の恩恵です。最も身近なのは、県内一帯に生育するカラマツでしょうか。中心部分は赤みが強く、周辺は白色で、年月と共に風合いの変化を楽しめるのも自然木ならではの魅力です。強度があるので構造材にも適しますし、壁面、床面にも利用範囲の広い木です。
あらゆる用途に活用できる木材の優等生はヒノキです。独特の芳香があり、光沢のある上品な外見も風格たっぷり。そして加工の容易さから使用頻度が一番高いのがスギで、北信と南信に多く分布しています。水分が多いので乾燥工程が重要となります。
個性的なアクセントとしてはアカマツが人気です。特に現代に主流の開放的な広いワンフロアの室内空間では、丸太のままで梁や柱などに部分使用するだけでも味わいが深まります。一棟丸ごと県産材というよりも、まずは、それぞれの用途にあった適材適所の部分活用から考えてみませんか。 信州の県産材は樹種が豊富。南北に長く標高差も大きい山岳県という地理的条件の恩恵です。
家は気候風土と深い関係にあるのですから、地元産の木でつくるのが本来の姿です。いつの間にか外材が主流になってしまったことから県産材の需要が減り、そのために壊滅しかけた供給体制を整え、需要と供給の良好な循環を回復させようというのが近年の動向になっています。需要を増やすことで産業を育て、人材育成と森林整備、ひいては環境整備につながるのです。大切な森林を守り、良質な木材を生産するためにも、今こそ県産材の利用をお勧めしたいものです。
また県産材を使うということは、運搬のためのエネルギーやコストの削減にもなり、まさにエコロジーにつながります。
そこで便利なのが、県産材を用いた家の見学ツアー「信州木の家住宅見学会」です。実施しているのは「信州木材認証製品センター」。県林務部の信州の木振興課との共同事業ですので、どちらからでもお申し込みできます。和風、洋風、二世帯住宅など7つのカテゴリーから希望のタイプを選ぶと、登録しているお施主さんの家を見学できる上、直接体験談をうかがうことができるという仕組みです。日程さえ合えば土日祝日の見学も可能ですから、住宅の新築やリフォームをお考えの方は、お気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
「県産材」では量が足りない」「品質にバラツキがあるのでは」「価格が高い」などの不安の声もあることは事実です。自然木は伐採後も生きて呼吸しています。それが木の家の良さなのですが、それ以上の不安を解消しようということで活動しているのが信州木材認証製品センターで、基準を満たす製品には認証を与えています。しかし、木は生きていますので多少の表面割れは発生しますが、強さ(強度)には影響ありません。「需要が増えると安定供給にも品質の向上にもつながりますからぜひ積極的な利用を」と呼びかけています。
数十万円程度といわれる外材との価格差は、県の助成金制度利用でまかなうこともできるようになっています。金額や条件などの詳細は、建築関係の業者に尋ねるか、県の建設部に問い合わせてみて下さい。
取材協力
信州木材認証製品センター
松本 寿弘さん
長野市岡田町30-60 TEL.026-226-1471
(有)田(でん)空間工作所
諏訪市上諏訪13187-1 TEL.0266-58-6602
最近よく見かける古材をセンスよく使ったショップ。
入り口にあしらった古木や枕木の温かみに引かれて思わず足を止め、
中に入ってしまいます。
すぐに足に馴染む古材の床に迎えられるとつい長居。
物語を紡ぎ出すかのようなテーブルの傷と小さな割れ目。
安らぎはこんなところに宿っているのでしょうか。
そんな古材を住まいにも取り入れてみてはいかがでしょうか。
居酒屋のカウンターやテーブル、アパレルショップの床も壁面も、楽器店、高級ブランドショップの内装にもと、さまざまなシーンに古材が活用されるようになっています。すべてを新品で揃えるよりも、不思議な落ち着きと包容力を含んだ空気が漂うのが人気の秘密。古材のストック量で日本最大級、古材利用の内装で定評のある「山翠舎」(本社・長野市)の山上建夫社長によると「15年ほど前からだんだん人気が出てきた」とのことです。
山上社長が古材の魅力を知ったのは「アメリカの大型スーパーマーケットなどが解体される時に大量の古材が生まれる」と聞いたことからでした。古着ショップが日本に上陸して人気が爆発したように、古材人気も意外なところから始まったようです。総合建築業からスタートして家具や建具工場も併設し、商業施設のデザインから施工までを手がけている山翠舎にも、店舗デザインに古材を使った依頼が増えるようになりました。
「地の利もあります」と社長。店舗の仕事は東京が中心ですが、質の良い古材は信州に豊富だからです。信州と新潟県との県境の豪雪地帯では、積雪に耐えるための太くて頑丈な材木が使われているのです。新しい素材と古材を組み合わせた新感覚の内装は、今では同社の主力になっているそうです。
古材はまだまだ使える立派な木材というだけでなく、今ではなかなか手に入らない銘木や、そこにはドラマや歴史が刻まれています。捨ててしまうと廃棄物でしかない古材を、店舗に限らず、住まいに活かすアイデアを考えることは環境への配慮にもなります。
また古き良きものを大切にし、少し手を加えれば再生できる古材の再利用は、資源のリサイクル、まさに有効活用です。
新築の家のダイニングテーブルを古材製にするだけで、フレッシュな気分と懐かしい気分を一緒に味わうことができそうです。ワンフロアの中心に古材の柱を1本立てれば、家族みんなの拠り所になりそうな立派な大黒柱に。もちろん床や壁にも、あるいはインテリアのアクセントとしてカフェのような演出もおしゃれです。古材の持つ色合いや風合いは、現代のモダンデザインの中にも不思議とマッチし、落ち着いた空間をつくりだします。
ただし、すでに長年使われてきた古材ならではの欠点は考慮しておかなければなりません。まず、水に弱いので雨などの当たらない場所に使用すること。虫食いや傷、割れは避けられませんから、逆にそれを活かしたデザインにする工夫を。柱など寸法の長いものは特に注意です。でも、傷んだ部分を切ったら寸法が足りないなどということになったら、専門の業者に相談することで切り抜けることもできます。
新しいものに古いものが少し入ることでホッとできるのは、誰にも共通する感覚。住まいにもっと気軽に古材を取り入れてみませんか。
取材協力
(株)山翠舎 山上 建夫社長
長野市大豆島東沖4349-10 TEL026-222-2211